●反対討論(30陳情第6号)

平成30年10月29日  豊島区議会議員 ふるぼう知生

 豊島刷新の会 ふるぼう知生でございます。

私はただ今上程されております30陳情第6号、すなわち「都において児童相談所・警察・学校などの連携・協力を求め、児童虐待防止対策の抜本強化・拡充するため意見書提出を求める」陳情の不採択に反対し、採択すべきとの立場から討論いたします。

 この陳情は本年3月に目黒区で5歳の女児が虐待死させられたとして後に逮捕される事件を受けて、所管の品川児童相談所と警察が情報共有して連携して活動すれば女児の命を救うことが出来た可能性があることを指摘し、東京都の児童相談所が面会拒否されたときに放置せず、すぐ警察に連絡していれば、警察官が家庭訪問して女児の状況を確認できていたはずであり、最大の課題は児童相談所の人手不足や予算不足ではなく、警察との連携をしようとしない閉鎖的、組織的風土にあるとして、特に児童相談所と警察との間の児童虐待事案の情報の全件・無条件共有化を求めるものであります。

 近年、都内だけでも江戸川区・葛飾区・足立区などで児童虐待死事案が明らかになっており、この10年間で東京都や市区町村が関与しながら虐待死させられた子供は明らかになっているだけでも26人にも上るそうです。そして、それらの事案の多くは、児童相談所と警察が全ての児童虐待情報を共有し、連携・協力して活動すれば子供たちを救うことが出来た可能性があると専門家は指摘しています。

 平成28年4月1日付け厚生労働省通達「児童虐待への対応における警察との情報共有等の徹底について」を受け、都道府県・市区町村は警察との協定を締結しており、都内では警視庁から児童相談所へ全ての情報が提供されているにもかかわらず、各児童相談所からは児童相談所が重大と判断した案件のみとし、情報提供が一部に留まる運用になっています。

 今年の8月31日付け産経新聞によると、「全件情報共有に踏み切っている都道府県は高知県、茨城県、愛知県等8府県に上り、他に11道県が情報の「全件共有」に前向きか検討中であることも判明、今後も増加が見込まれる。」とあります。全国の地方自治体でそのような動きが加速している中で、東京都もそこに加わることを否定する理由は何もありません。もちろん、児童相談所と警察との情報共有化のみで児童虐待の問題が全て解決するとは私も考えてはおりません。しかしながら、これだけ多くの児童虐待による痛ましい事件が相次いでいる昨今の状況を受けて、今般議論され、現場を知る専門家の方々も多くがそのような提案をしているわけですから、一考に値すると同時に行動に移すことの意義を感じますし、児童虐待の対象となる家庭が別の地方自治体に移転することも考えるとこのルールを全ての都道府県において普遍化していくことが肝要であると考えます。そしてそれは問題の性格上、急を要しているのです。

 陳情の付託を受けた子ども・文教委員会の審査では、この陳情が受理される以前に、豊島区議会として既に、児童虐待防止に関する意見書を国や東京都に提出しているからという理由、あるいは児童相談所と警察の役割分担が重要なのであって、必ずしも全件情報共有が必要ではないとの理由から、審査に参加した全ての会派が不採択にすべきとの態度表明を行いましたが、この陳情は豊島区議会が提出した意見書よりも、児童虐待という社会問題の解決に向けたより具体的なアプローチを示していると私は考えますし、豊島区議会として第二回定例会時に意見書を提出したからといって、中身が更にグレードアップしているわけですから、新しい意見書を提出しなくてもよいという理由にはなりません。

 また、児童相談所と子ども支援センターと警察との役割分担を強調する説明及び全件情報共有による警察への負担の増加並びに現場の混乱の助長という説明は、理論としては理解しますが、児童相談所の裁量に任せるあまりに、悲しい事件が連続的に継続して発生しているという現状の認識が欠如しているのではないかと感じます。問題は児童相談所の閉鎖的な体質にあり、そこをチェックする意味でも警察との全件情報共有がこれまでよりも問題を解決する事に寄与すると私は確信するものです。

 この陳情ではその他にも、@転居・転入等による複数の自治体間をまたがる緊急性の高い虐待案件のケース移送事案についての通知後48時間以内の被虐待児童の現認A児童相談所職員の大幅増員と専門職の加配置B児童相談所と学校・教育委員会による該当児童・生徒の虐待事案全件共有C各都道府県警察機関の把握する虐待事案の全件共有も要望されています。

 どの項目も、行きつくところ関係する様々な部局と情報共有することの重要さを訴えていることは理解できますし、児童相談所職員の大幅増員と専門職の加配置についても予算に限りはありますが、年々件数が増加している児童虐待問題を丁寧かつ、確実に解決していくためには必要不可欠な措置であると考えます。

よって、今回の陳情に対する子ども・文教委員会で出された不採択という結論には到底納得することが出来ず、採択すべきであると強く主張するものであります。

私は、児童虐待問題について、豊島区が平成34年1月に児童相談所を開設し、しっかり対応しようとしている意気込みをもっていることに敬意を表しております。地域に対する説明会の中で住民の皆様から様々なご心配が寄せられているという報告も頂いておりますが、説明責任をしっかり果たした上で、区民の皆様にご理解をしていただくと共に、新しく開設される豊島区の児童相談所が、該当する家族が普通に愛情と信頼に満ちた親子関係を取り戻すために存在する児童相談所として、全国のモデルケースになってもらいたいと心から願っております。そのために、以前から何度もこの児童相談所と警察の全件情報共有の意義について、区民厚生委員会や様々な機会を通じて発言してまいりました。真の問題解決のために、豊島区議会がぜひともこの陳情を採択していただく事を切に要望いたしまして、私の討論を終了いたします。ご静聴誠にありがとうございました。