平成28年度 豊島区予算案 意見開陳

H28年10月25日

刷新の会 古坊知生

豊島刷新の会、古坊知生でございます。平成28年度決算特別委員会での質疑を受けて意見開陳をさせていただきます。

 まず冒頭に、平成28年度一般会計歳入歳出決算及び三特別会計歳入歳出決算の認定について、委員会の審査により概ね了とし、賛成することを表明いたします。以下、その理由や区財政に対する認識、そして若干の提言や要望を述べさせていただきます。

先程来、各会派の意見開陳の中にも数々の数値が言及されておりますので、重複は避けて申し上げますが、豊島区の財政は経常収支比率や人件費比率、あるいは健全化判断比率、さらには公債費負担比率等の全ての数値において健全な財政と感じとれる数字、いわば安心できる数字となっていると考えます。しかしながら、本区は扶助費や操出金の増加、公共施設の改築などで多くの課題も抱えていることから、引き続き将来を見通した計画的で健全な財政運営に努めていただくことを要望します。

 「入るを量って、出を制す」という理念、すなわち身の丈に合った財政が区の基本理念でなければならないというのが決算の審議において私が一番重要視することです。初日の質疑においても触れましたが、今後5年間で856億円という巨額の投資事業が必要であるという差し迫った現実があります。2020年東京オリンピック・パラリンピック、さらには新しく加わった2019年の東アジア文化都市事業に向けて急ピッチで整備をしなければならない事業が数多くある中で、その財源をどのように捻出するのか、大きな債務を抱えはしないか、財政調整基金を多く取り崩すことによって、債務と基金のバランスが崩れはしないか、国内外経済状況の変動等も考慮に入れると、この先不安な要素が無いとは言えません。全庁的にさらなるコストカットを検討し、民間の視点も取り入れながら、行財政改革にあくなきチャレンジをしていただけたらと思います。

 豊島区役所の部や課の組織数がだんだん増えている状況は組織の膨張を招いていると指摘しましたが、第7次豊島区定員管理計画では平成38年度の職員の目標数値は1800名となっていることから、目標数値の達成にこだわりながらも、超過勤務手当が多い課が偏在している事実があるので、人員の配置を部局横断的に見直し、超過勤務を可能な限り少なくし、職員の皆さんがモチベーションを高く持って働けるように、国の働き方改革という方針も見据えながら、区役所内でワークスタイルの変革にも更に取り組んでもらいたいと思います。

それでは以下、款別に要望を述べさせていただきます。

議会費と総務費ですが、選挙時の投票立会人の報酬や投票事務従事者の謝礼が高額すぎると考えます。豊島区だけで決められないところもあるとは思いますが、世間一般常識に照らし合わせて金額を決定し、人件費の削減に努めていただくことを要望します。また、期日前投票所において今回はご協力をいただいている両デパートの使えるスペースの関係により、東武デパートで10区の投票を、西武デパートにおいて12区の投票をしてもらいましたが、投票のご案内状にはしっかりそのことが明記されていたにもかかわらず、間違えて反対の場所に行ってしまった方も多数いらっしゃったと聞きます。今回の選挙での投票行動を受けて、こうしたことについて検証し、特に豊島区内の12区の有権者の方々がもっと投票しやすい方法を見つけ出してもらいたいものです。その際、大塚駅や巣鴨駅の駅ビル内における投票所設置についても更なるご努力をお願いします。

ペーパレス化という意味で議員や管理職に一台ずつタブレットが貸与されています。その財政効果をしっかりと把握し、かつ個人個人においては使用の頻度にも差が生じていることも予想されますので、自戒を込めて申し上げますが、せっかく高いお金を出して使用させてもらっているので、各自がそうした自覚をもって有効的に活用してもらいたいものです。

また、ペーパレス化の時代にあって、保存する文書の量が将来的に減少することも予測されますが、そうはいっても紙媒体として残しておかなければならないものもあることから、永年保存する公文書の倉庫を適正に管理するとともに、公文書は区民の財産であるという認識をもち、情報公開条例と公文書管理条例は車の両輪という観点に立って、早急に豊島区において公文書管理条例を制定することを要望いたします。

福祉費と衛生費ですが、本区が取り組んでいるセーフコミュニティの重点課題の一つに挙げられている自殺・うつ病の予防に関して、精神科・心療内科の薬漬けとも言われる不適切な向精神薬処方も自殺やうつ病の大きな原因であることが判明してきていることから、精神疾患を持つ患者さんに寄り添う役割を果たすゲートキーパーの方々を養成することは大変に重要ではありますが、その方々が単に専門家に繋げるという事で終わってはいけないと考えます。患者さんの生命に関わることですから、専門家につなげるだけでなく、その後その患者さんがどうなったのか、元気に回復したのかが分かる時までしっかり後を追っていくことが重要と思いますので、そのような体制を築いていただくことを要望します。

また、待機児童0宣言を行った本区であるがゆえに、区内外から非常に多くの注目が集まっています。来年度に向けて認可保育所の増設のめどが立ったということではありますが、0宣言をしているからこそ、子どもを持つ親御さんの期待が膨らんでいるだけに、相談に来られる方々への対応は慎重にも慎重を期し、その方々の立場に寄り添った対応をお願いします。また、内閣府が主導して行っている企業主導型保育所についても、そのような保育所が増えれば豊島区としても待機児童対策において有益であることから、国の方向性を注視し、自治体として出来ることには区民の皆様のご要望に柔軟に対応していただきますようお願いいたします。

環境清掃費・都市整備費・土木費ですが、ずっと社会問題になっている資源ゴミの持ち去り防止対策事業に関して、日頃の関係者の朝早くからのパトロール活動に心から敬意を表します。今後、度重なる条例違反には告発も視野に入れて強い対応をとっていくとのことですので、その方針を支持いたしますが、その際に、関係各部局が連携しながら、資源ごみを持ち去る人が、最後は経済的に自立することが出来るような体制の構築をお願いいたします。

大塚駅南口については今年度に入り駅前広場や地下駐輪場が整備されて、街のイメージが一新されました。今後は北口の整備がメインとなりますが、北口から南口に繋がるルートを強化することにより、南口にある地下駐輪場へ自転車を誘導することやトイレの改修など地元のご要望をしっかり受け止めてもらい、実現に向けてご努力をいただきたいと思います。なお、駅前から折戸通り商店会に向けて広がりを持たせたいというご要望に対して、街路灯の明るさを工夫し、さらにはちょうど良い場所に某有名企業がホテル経営に乗り出すとの情報も入った今、地域との窓口にもなってもらいながら、北口の商店街が更に面的な広がりを持っていくためにもご尽力をお願いいたします。

文化商工費と教育費ですが、学校自体がブラック企業であるといわれる昨今、教職員の負担を軽減するために、スクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラーという人員、さらには部活動の外部指導員の活用も図っている状況です。学習指導要領の改訂によって英語の授業数の増加もあり、大変なこととは存じますが、教職員の方々がモチベーションを高く持って、元気に児童・生徒を指導してもらえるような学校の環境整備に更に尽力していただくことを要望いたします。

また、荒川野球場については、夏の時期に暑さをしのぐテントも無く、簡易トイレも匂いがきついことから子供達はそのトイレを使わず、草むらで用を足しているという状況が散見されます。様々な課題はあるとは思いますが、スポーツをする区民の環境の整備を進めていただくことを要望いたします。

南長崎マンガランド事業ですが、マンガの聖地としまミュージアム整備検討会議の中で関係プロダクションの協力がまだ得られず、整備事業の成功に不安を抱いている方もいらっしゃることから、区長を先頭にして区役所が一丸となり、各プロダクションにご協力の確約をいただき、トキワ荘復元施設が地域の2000名にも及ぶ署名から始まったこの運動の当初の目的を果たすような建物として完成することを願っております。そしてリピーターの獲得のために様々な企画を充実させ、更には様々な著作権の問題をクリアーにして、近隣商店街にもその恩恵が広がるような、そして街の活性化に連動するような工夫をしていただくことを要望いたします。

 次に三特別会計についてですが、保険料が高額にならないようにするには、医療費自体のさらなる抑制を考えなければなりません。国においては昨年度、調剤報酬や薬剤関連の診療報酬を改定し、残薬や不適切な多剤投薬、長期投薬を減らすための取り組みなど医薬品の適正使用の推進を方針として打ち出しました。その方針を徹底すべく、豊島区内の業界にも更なる周知徹底をお願いします。また終末期医療という観点が国においても議論されており、家族で話し合ったり意思表示をしたりする機会を持ってもらうための啓発パンフレットが国の方で来春作成され、地方自治体に提供されるというスケジュールになっていることから、その際には積極的にパンフレットを活用して、万が一の時に家族が慌てることのないような体制を作っておくという意識啓発に区としても率先して協力していただくことを要望いたします。

最後に、私が言及した部局横断的な提言を2点申し上げます。一つは、セーフコミュニティとインターナショナルセーフスクールについてです。5年前にスタートしたWHO(世界保健機関)セーフコミュニティ協働センターが認証するセーフ・コミュニティは、豊島区における安全・安心に関する事業を官民一体となって推進する大きな原動力となりました。今でもセーフコミュニティの認証を受けていることに対して、一区民として誇りに思っております。しかしながら、このセーフコミュニティを認証する組織が2015年10月にWHOの直属ではない、セーフコミュニティ認証センターという一NGO(非政府組織)になっているということがわかりました。安全・安心を追及する精神はWHOの精神そのものであると区は言いますが、WHOという大きな冠がなくなっている以上、一NGOに対して将来、しかも永続的にトータルとして何億、何十億という単位で区民の貴重な税金が投入されることには議論の余地があると思います。セーフコミュニティ自体は豊島区のある意味シンボルリックな施策になっているところがありますので、継続して再認証を受けることを止めるという判断は難しいところではありますが、インターナショナルセーフスクールについては、私も誤解していましたが、WHOの理念に基づいてとは言いつつも、やはりWHOという冠が最初からついてないわけですから、区立の小中学校全校で認証を受けるということもどうかということに考えが及びますし、仮に全校が認証を受けるにしても再認証まで必要なものなのかどうか、納税者の方々に説明責任を果たせるかどうかという観点から、費用対効果をしっかり検討し、できる限りのコストカットを検討してもらいたいと思います。

2つめは、「少子化対策をしている豊島区」として内外に強く打ち出すべきだということです。1期生の時から常に申し上げておりますが、高齢者人口の比率が高い豊島区において、将来の安定的かつ、持続的な社会保障制度の維持を目指して、子育て世代を本区に誘致し、更には安心して第二子、第三子と生んでいただけるような政策を打ち出していくべきであると考えます。全国で給食費の無償化という政策がもう80を超える地方自治体で実践されています。それは一つの方策ではありますが、東京23区の中で平成26年度まで21年間連続で23区中、合計特殊出生率NO.1だった江戸川区では、少子化対策を前面に打ち出しています。区毎に人口規模、面積、更にはみどりや公園の環境なども違いますので比較は難しいところもありますが、2025年、東京でも人口の減少が始まると言われるその前に総合的な対策を打ち出していくことが重要であると考えます。部局横断的に整合性を図りながら政策として体系的に作り上げていただくことを要望いたします。

豊島区においては、消滅可能性都市という不名誉なレッテルを貼られて、区民の皆様からもたくさんご心配の声をいただきました。しかしながら、そのことを契機として、F1会議がスタートし、若い子育て世代のお母さん方のご意見をふんだんに取り入れ、女性にやさしいまちづくりを標榜し、同じ名称の担当課も作り、さらには高野区長が推進してきた文化施策が開花することによって豊島区全体のイメージアップがなされ、かつて3Kと言われた池袋も今では住みたい街ランキングで常に上位にランクされるような変身を遂げました。待機児童対策にも大きな予算を組んでもらい、今年度は念願の待機児童0宣言を行うこともできました。このような一連の流れの中で、豊島区が女性にやさしいまちで、子育て支援も充実しているというメッセージが多くの区民・都民にも広がりつつあると感じております。だからこそ、次なる段階は少子化対策であると私は考えるのです。豊島区においては23区の合計特殊出生率が直近の数字で最下位であることを踏まえても、少子化対策に本腰を入れなければなりません。部局横断的にありとあらゆる政策を動員して、豊島区で子育てをするご夫婦がもう一人、そしてもう一人と子供を持ちたいと思えるような環境づくりにご努力をしていただくことを切望します。

以上、一般会計歳入歳出決算および三特別会計歳入歳出決算に対する意見を申し上げましたが、総じて申し上げますと、歳出が歳入を超えない身の丈に合った財政であり、時代に合った区民のニーズにできる限りこたえようとし、新庁舎への移転と共に迎えた豊島新時代に対応する姿勢が見える堅実な決算であったと評価するところであります。

 しかしながら、今後も景気動向には敏感に反応し、税収の想定を誤ることなく、また引き続きコストカットの意識をさらに強く持ちながら歳出削減に取り組みつつ、すべての事業について無駄がないかどうか再点検することが必要と考えます。締めるときはしっかり締め、使うときは予算の枠内で思い切って使うことも必要です。今後5年間で856億円の投資的経費が見込まれております。ここぞという時、必要な時には思い切って予算を投入しなければなりません。しかしながらその前提にあるのは、区民に対する情報公開と説明責任です。本区におかれましてはさらなる情報公開に取り組んでいただき、事業によっては多額の予算を投入する説明責任を果たしてもらいたいと思います。これからも、我々議員、そして区民が本区の予算や決算について活発に議論できるような環境作りに努力を傾注していただけたら幸いです。

  終わりに今回の決算審査におきまして、公平公正な委員会運営にご尽力していただきました、西山委員長と芳賀副委員長のご労苦に対して心から敬意と感謝を申し上げます。そして高野区長をはじめ理事者の皆様におかれましては、私の質問に誠意ある回答を頂きましてありがとうございました。またお忙しい中、私の資料請求に対して迅速かつ的確な資料を提出していただきましたことにも心から感謝を申し上げます。 

 今回の決算審査が来年度予算に活かされ、豊島区がより住み続けたい街、若者にとって夢と希望があふれる街、高齢者がお元気で活発に活動する街、そして赤ちゃんの元気な泣き声と子供たちの笑い声が響く街として選択され、永遠に繁栄することを願いながら私の意見開陳を終了させて頂きます。ご清聴誠にありがとうございました。