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平成23年度 豊島区予算案 意見開陳

H23年3月11日

刷新の会 古坊知生

 刷新の会 古坊知生でございます。私は本予算特別委員会に付託されました四つの議案、即ち平成23年度一般会計予算及び3特別会計予算に心からではありませんが、総合的に見て賛成の立場から意見を述べさせていただきます。
今回の予算委員会で私は、原点に帰って新人議員らしく「地域の声と自分の考えを直接ぶつけてみよう」というテーマを掲げて質問してみました。そのせいで、まとまりのない質問になったかとは思いますが、そんな中でも丁寧かつ分かりやすく答弁をしていただいた、高野区長をはじめとする理事者の皆様に心から感謝を申し上げます。
まず総括質疑で、高野区長が就任する前の区長の時代に残してしまった負の遺産についての議論がありました。バブル崩壊による日本経済の深刻な実態を行政側は読み取れず、その後の対応を誤り、庁舎建設基金をなし崩し的に減らし、区債を無秩序に発行することによって、豊島区の財政は破たん寸前まで追いやられました。このことは、公共団体であるから破たんは無いとの甘い認識が存在したこと、そして次世代につけを残すことは避けるべきという、ある意味での貞操観が欠如していたと言わざるを得ません。
一方で、議会側においても、そのような中で作られた予算案をいろいろと主張したとはいえ、賛成多数で承認してきたわけですから、その責任の一端があることは明白であります。私は過去のことをほじくりかえして批判しようとしているのではありません。この教訓を生かして、行政側も区政の基本姿勢である身の丈に合った財政を目指すということはもちろんのこと、議会側も予算案に対して単に賛成か反対か意見を述べるのではなくして、必要があれば、各党各会派で協議して修正案を提出するという意志を今後持つべきだと言いたいのです。そのような先進的な議会を目指すべきと考えます。
話が若干それましたが、総論的に言うと、高野区政になってからは、先ほど指摘した教訓を生かし、平成11年度末に872億円あった区債残高も返済に返済を重ね平成23年度末には308億円になると予想されています。土地開発公社の長期債務も積極的な繰上償還により完済し、少しずつ区民のニーズに応える新規事業に目を向けられる段階に来ていることを感じさせます。これはとりもなおさず、高野区長の民間商人出身としての、あるいは経営者としての卓越した感覚によるものでありまして、この3期12年の間にこれほどの財政改革を成し遂げた高野区長の手腕に改めて敬意を表するところであります。その実績の陰で様々な人知れぬご苦労があったことが推測されますが、今後も行財政改革に力強いリーダーシップを発揮してくださることをご期待申し上げます。
一般会計の歳入においては特別区民税や特別区財政調整交付金も前年度当初予算を下回る厳しい状況にありながらも、基金の取り崩しや起債の発行を可能な限り抑制して、将来の不安定さにも備えた、健全かつ堅実な予算となっています。
歳出においても、人件費や投資的経費を抑制しながらも、新たな区民要望に積極的に応えるため、新規拡充事業が157事業、約18億6千万円の規模と昨年よりも大幅増になっていることを評価します。
以上の観点から平成23年度予算案は「身の丈に合った財政」と判断しますが、将来的に大きな問題が山積していることも事実です。今後もますます増え続けていくであろう、医療費や介護給付費、そして生活保護費などの扶助費への対応、また学校をはじめとする公共施設の改築・改修など、今後発生する莫大な費用をどのように捻出するのか。更には安定した財政を確立する上で、債務圧縮と基金の積み増しも避けられない課題です。それらの問題点を踏まえて、今後も、計画的に行財政改革に取り組んでもらいたいと思います。
以下、款別に所感と主な要望を述べさせていただきます。
議会費の審議では、議会の情報公開の徹底化を訴えさせていただきました。インターネットによる議会中継については、その一翼を担う有効な手段と考えており、新庁舎建設時には議員が関係する委員会や会議等全てにおいて動画中継できるようなシステムを整備してもらいたいと思います。鹿児島県の阿久根市や愛知県の名古屋市のように、市民団体が市議会に対してリコールをし、住民投票によって市議会議員選挙が行われるようになりましたが、議会に対する市民の不信、あるいは議会不要論まで飛び出すくらい、議会が何をしているのか分からないという根本的な市民の叫びの現れであると考えています。豊島区議会も対岸の火事とすることなく、情報公開を徹底して、地域において議会主催の議会報告会を開催するなど、顔の見える議会にしていくべきだと思います。議員定数のあり方や議会における議論のあり方なども定める、議会基本条例を制定することは次回の議会構成メンバーの宿題になると思いますが、新庁舎においてはどのようなニーズにも応えることのできる柔軟性のある議会フロアーになるよう要望いたします。
総務費の審議では、入札制度について、いろいろな議論が交わされました。今年度豊島区においても、その業者の地域貢献度を考慮する制度改革に踏み込んだことは評価するところではありますが、今後も地元業者の育成と保護という観点から、更に踏み込んで検討をして頂くことを要望いたします。
 福祉費ですが、豊島区も超少子高齢化社会を迎えております。高齢化社会というのは医学の進歩の証明であり、また日本経済発展の結果でありますので本当に歓迎すべき事だと思いますが、少子化となるとそうはいきません。むしろ積極的に対策を講じるべきです。高齢者の方々も時代を担う若い世代もバランスよく区内に在住してもらわなければなりません。だからこそ、豊島区が「子育て世代である若者に魅力があり、お年寄りを大切にする街」にならなければならないと考えております。そういう意味で自民党豊島区議団の要望で来年度の敬老の日事業の拡充がなされ、喜寿や米寿、新100歳、100歳超、区内最高齢者の方々、金婚・ダイヤモンド婚を迎える方々に対するお祝品の贈呈が復活あるいは拡充されることは、高齢者の方々に対する敬意と感謝を具体的に表す良い事業であると考え、評価をいたします。
一方で子育て世代を支援する事業として様々ありますが、待機児童の解消は昨今のそして全国的な問題となっています。議論を聞きますと、豊島区は受け入れ枠の拡大を図りながら懸命な努力を重ねていると感じますが、経済の先行き不安が保育のニーズを想像以上に増加させているという現状が透けて見えます。今後もできる限りのご努力をお願い致します。
衛生費の審議では、子宮頸がん予防ワクチンの接種反対という私の持論を述べました。この点は特に強調しておきます。反対しようにも議会で圧倒的賛成多数で子宮頸がん予防ワクチンの接種に公費負担をすることが決定してしまっているので、これ以上私が一人で反対しても仕方ありませんが、接種するに際しては、正しい情報を当事者や保護者にも提供してほしいと思います。そもそも子宮頸がんの罹患率が20代、30代において上昇してきたことの背景に性倫理道徳の乱れがあるという真実を誰も指摘しません。性交渉を通じてヒトパピローマウィルス(HPV)に感染するのですから、中学生・高校生の、性倫理道徳の問題として捉えるべきです。そのようなことを言わずにただ、このワクチンが女性の救世主、あるいは全ての女性に万能なものであるかのように広告することは不誠実であると思います。もちろん私達の想像以上に青少年の性道徳が乱れている実態があり、その現状を憂いて性交渉を始める前に、つまり小学校高学年から中学生の初めの時期にこのワクチンを接種するという考えは論理的には成り立つかもしれませんが、まずは性道徳の乱れを解決していこうとするのが政治の本来の姿勢であり、ワクチン接種に公費を投入することは、政治がその様な性倫理道徳の乱れを許すあるいは認めるというメッセージを送ることになりかねませんし、接種後においてもこれでどんなに性交渉しても大丈夫だという安易な発想をする青少年が出てくる危険性があります。結果として更に性倫理道徳が乱れたらどうするのかというのが私の懸念するところです。その様なことのないよう、製薬会社が作った、自分たちのワクチンがいかに有効的で立派なものであるかのような印象を与え、どんどんワクチンを接種したくなるパンフレットではなく、このワクチン接種がなぜ社会問題になっているのか、子宮頸がんになる理由と、正しい性生活を送るならばほとんど問題が起こらないという情報が与えられていません。がん教育という意味では、青少年の正しい性のあり方についてしっかりと教育していただくよう教育委員会にも強く要望しておきます。なお、先日、小児用肺炎球菌ワクチンやヒブワクチンを打った後に乳幼児5人が相次いで亡くなるという事件が発生し、厚生労働省はこの2つのワクチン接種を一時中断しました。原因は評価不能あるいは不明となっており、「さらに情報を収集し、継続して議論することを決定した」と発表されております。その時に子宮頸がん等ワクチン予防接種後副反応検討会も同時に開催されたことをお知らせしておきます。平成21年8月に開催された厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会の議事録でも明らかなように、この子宮頸がん予防ワクチンは日本における臨床試験を待たずに承認されたものであり、本来であるならば10年、20年かけての検証が必要であるにもかかわらず、政治的な都合で異例ともいえるスピードで接種が可能になったということを指摘しておきます。正しい政治主導であるならばよいのですが、事を急ぐあまり好ましくない結果が後々表れないかと危惧するのは私だけでしょうか。
いずれにしても、情報提供は正しく行い、保護者と当事者に接種するかしないかを判断してもらうという最低限のことはやってもらいたいと思います。子宮頸がん予防ワクチンは他のワクチンと性質が異なります。性が関わってくるから単純な話ではありません。そのことを私は強く主張しておきます。
清掃環境費ですが、21世紀は環境の世紀といわれ、後世にこの素晴らしい地球を受け継ぐ為にCO2の排出量を削減することに全庁を挙げてとり組んでいる姿勢を評価します。しかし残念ながらまだまだ区民の意識が高まっているとはいえない状況だと思いますので、「産官学連携による家庭の省エネ診断事業」など様々な方法を駆使して区民の意識啓発に更に務めてもらいたいと思います。
都市整備費ですが、豊島区の最大級のプロジェクトとして、造幣局を中心とした地域、すなわち東池袋街づくり協議会の議論に大いなる関心と期待をもっております。東京都は防災公園として整備する方針があるようですが、それも含めて池袋駅から東池袋駅、そして大塚駅につながる面的な広がりをもった形での整備をお願いしたいと思います。都市計画道路補助81号線あるいは、補助176号線の整備については、地元のコンセンサスをまとめ、地元のコミュニティが失われることなく、また近隣の商店街が活性化する方策を地域と共に検討して頂くよう要望いたします。
土木費ですが、交通事故の中で自転車事故の占める割合が多くなっている昨今、セーフコミュニティという観点からも交通安全教室の更なる充実を希望します。特にスタントマンによる中学生を対象とした交通安全教室は対象範囲を広げるなど様々な工夫ができると思いますので、充分に活用して効果が上がるようにして頂くことを希望します。
また、文京区が行っている3人乗り自転車購入補助制度を参考にして子育て支援という観点からも、制度の導入に向けて再検討していただくことを要望します。
 文化商工費ですが、商人祭りは小さな商店街が複数集まり、一体となることによって大きなパワーとなり、豊島区の各地域の個性をアピールできる絶好のチャンスであります。これからも継続して支援してもらいたいと思います。また審議の時に豊島区の商店街の現状についてデータを用いながらインターネットに書いてあった記事を長々と紹介いたしました。商工豊島というフレーズの通り、商業の街というイメージのある豊島区ですが、池袋駅の乗降客数も減少の一途をたどる昨今、今後どのようにして来街者を劇的に増やしていくかが大きなテーマになっています。池袋駅を中心として、東西デッキ、LRTなど大きな仕掛けを区は考えてくれておりますが、若者が興味を示す街、特に女性にとっても魅力のある街づくりという視点は重要だと思います。長い時間をかけての検討になろうかとは思いますが、生まれ変わったニュー池袋となるよう、また豊島区の更なる発展の為にも、大胆なビジョンを打ち出していただくことを期待しております。
教育費ですが、他区との比較の中で教育費の割合が低いのではないかと指摘をしました。事業費だけで見ると23区の中で真ん中ぐらいだという反論をいただきましたが、行政の基本は福祉であり教育であるという考え方から言うとまだまだ不足しているのではないかという思いがしてなりません。教育費は未来への投資であります。具体的な効果が表れるには時間がかかるかもしれませんが、必ず地域や日本国の為にその投資は生かされると確信するものです。多様な教育が求められている昨今、一人一人のニーズもさまざまです。きめ細かな教育が施されるよう、教育費の更なる充実を要望します。
そしてその教育行政を指揮監督する教育委員長を中心とした教育委員会も、もっと情報公開に積極的であるべきと考えます。もちろん定例会議はいつも公開されていますが、傍聴人はせいぜい一人にとどまっています。時には外に出ていって区民の前で定例会議をすることもよいのではないかと考えます。顔の見える教育委員会を目指すべきです。私は時々、議事録を見させていただいておりますが、こんなにも見識の高い方々に本区の教育委員をやっていただいているのか、私が議会で同意したことは間違いではなかったと嬉しく思っています。であるならばその生の議論、あるいは頑張っている姿を区民に見てもらうことも時には必要かと思い提言をさせていただきました。ご検討をお願いします。
特別会計ですが、総じて一般会計からの繰入金が法定繰入の基準をはるかに超える内容になっております。保険料を上げないための措置としての意味は充分理解しますが、秩序なく一般会計からの繰り入れを行うと特別会計としての意味を失うことにもなりかねません。根本的な解決のためには国の社会保障制度のあり方を変えるしか方法は無いかと思いますが、これまで以上に東京都や国に対して地方自治体の負担の現実を訴えていくなかで改善の努力をしていただくことを希望します。
政治はどちらかというと、社会的弱者の為に存在するものです。しかしそうはいっても、自助の後に共助があり、共助の後に公助がくることを忘れてはいけません。まず自分自身が一生懸命生きてみる。しかし不幸にして失敗して挫折し、立ち上がることが困難になってしまった方が再挑戦をするために手を差し伸べるのが政治だと思うのです。もちろんその前にお隣や地域の支え合いも必要です。とにかく福祉という美名のもとに何でも援助しようというのではなく、本当に必要な支援とは何かということを、行政も議会も考えなければなりません。生活保護者や就学援助の割合の高まりに一抹の危惧を感じます。必要な方には支援がしっかり届くように、しかし必要のない方には厳格な対応をすべきです。そうしないと社会の不公平感、あるいは頑張って成功しようとする意欲や向上力が失われる可能性があるからです。そういう観点から行政も毅然と対応してもらいたいものです。
豊島区は負の遺産を清算し、時代に合った、区民のニーズに合った政策を強力に推し進める時期が到来しつつあります。今後も公共施設の再構築という大きな課題はありますが、区民一人ひとりが元気になる、血の通った予算とするために、区長を中心として自信を持って予算を提示してもらい、議会側も区民の意見を十分に反映させる提案をし、両者が話し合いの中で接点を模索していく。そして結論を出すという二元代表制の趣旨を踏まえた本当の議会制民主主義を実現するために、適度な緊張関係を持ってお互いが切磋琢磨すべきと考えます。ひと昔前に政治のスローガンとして「コンクリートから人へ」という言葉が流行しました。公共事業を批判するかのような意味が含まれていますが、私に言わせれば、「コンクリートも人も」であります。社会的弱者の方々に手厚く行政の支援を施すことも必要ですが、一方で街の発展の為にインフラを整備し、街のにぎわいを創り、来街者を増やすことも極めて重要です。しかし財源には限りがあります。行政においてもやれることには限界があるのです。少ない予算をいかに有効に活用するか、これからは行政側と議会側との知恵比べです。福島県の会津若松市では議会基本条例を制定して以降、活発な議論が展開されており、全国津々浦々から沢山の視察を受けているようですが、本区の行政や議会もそうありたいと心から願うものであります。
最後に本予算委員会における吉村委員長、高橋副委員長の公平公正な運営についても、衷心より厚く御礼を申し上げます。以上で私の意見開陳を終了させていただきます。ご静聴まことにありがとうございました。