●2010年11月30日一般質問全文 (ワードデータで読みたい方はこちらより右クリックでダウンロードしてください。)
「豊島区におけるセーフコミュニティ考」
平成22年11月30日 刷新の会 古坊知生
刷新の会 古坊知生でございます。私は「豊島区におけるセーフコミュニティ考」と題しまして、セーフコミュニティについて一般質問をいたします。高野区長を始め理事者の皆様の積極的な答弁を期待いたします。
豊島区においては、世界保健機関・WHOが推進する、予防に重点を置いた安全と健康の質を高める街づくり活動、すなわちセーフコミュニティの平成24年度の世界認証取得を目標とした取り組みが進められています。池袋という繁華街を抱える本区において、安心かつ安全な街であること、そしてそういうメッセージを全国に発信することは豊島区の発展に大きく資するものとして区長の姿勢を高く評価するものであり、私も大いに賛同するところであります。
今年の11月19日に神奈川県の厚木市でもセーフコミュニティとして国内で3番目の世界認証取得が成され、次は豊島区の番であると区長を始め担当部局の方々の意気込みは相当なものであると推察いたします。
私はセーフコミュニティとして世界認証取得を受けた、京都府の亀岡市や青森県の十和田市、そして前述の神奈川県厚木市は訪問しておりませんが、インターネットを通じてそれぞれの市のホームページから資料を研究してみました。そこで感じたこと、疑問に思ったことがありますので豊島区と比較しながら質問してみたいと思います。
まず、先日議員協議会において、セーフコミュニティ認証に向けた基本方針の素案が示されました。その中で10項目の重点テーマが決定したとしています。それらを列記すると、
1. 一人暮らし高齢者の見守り
2. 障害者の安全
3. 子供のけが予防
4. 児童虐待の防止
5. 学校の安全(セーフスクール)
6. 自殺・うつ病の予防
7. がんの早期発見
8. 自転車利用の安全
9. 繁華街の安全
10.地震災害の防止
となっています。セーフコミュニティ基本方針を策定し、その中で「区の地域特性を踏まえて」という行がありますが、豊島区の地域特性をどのように考えたからこのような方針が出てくるのだという大前提を理解しなければ議論がスタートできないと思いますので確認の意味で聞かせてもらいます。数多くあるテーマの中からどのような基準でこの10項目を決定したのかその経緯を説明して下さい。併せて豊島区の地域特性をどのように考えているのかも示していただきたいと思います。
詳細に重点テーマを見て、私が特に注目するのは5番目のセーフスクールという概念です。日本では大阪教育大学付属池田小学校が全国に先駆けてWHOセーフコミュニティ推進協働センターのインターナショナルセーフスクール(以下ISSと略します)認証を取得し、先日国内2番目として厚木市立清水小学校が認証取得を果たしました。本区においても区立朋有小学校をモデル校とし、ISSの認証取得を目指すこととしています。早くから集団登校を実施し、児童の安心安全に積極的に取り組んできた朋有小学校に白羽の矢が当たったことはある程度理解するところではありますが、そのようになった経緯を説明してもらいたいと思います。それからISS認証取得を目指すにあたり、今後朋有小学校においてどのような活動を展開していこうとしているのか、児童が新たにすべきこと、そして地域や保護者の協力がどの程度さらに必要になると考えているのか、今考えているところをお示しいただけたらと思います。
ちなみに、厚木市の清水小学校では花壇の植え替えやゴミ拾いなどきれいな学校を目指して活動している「明るい環境づくりチーム」や、図書室に安心安全に関する本を設置してきた「みんなに発信チーム」など、5つのチームを作りそれぞれに活動しているそうです。また教職員やPTA・青少年団体などで組織している「しみずっ子すこやかネットワーク会議」などの取り組みもあれば、校内外傷発生マップやいじめ暴力防止キャンペーンなどの掲示物である「安心・安全ギャラリー」などもあり、セーフスクールとしての特色をだしています。豊島区の地域特色を生かした、あるいは朋有小学校の特色を生かした豊島区ならではのセーフスクールの目標についてどのように考えておられるのか。また具体的なスケジュールや取り組み方針も教えてください。
次にテーマ1とテーマ2はまとめて言うと、お年寄り、障害者に優しい街ということになります。いろいろな観点から検討すべき内容であると思いますが、私はユニバーサルサービスという観点からバリアフリー化の早急な検討及び実施が必要かと思います。区内の施設においてバリアフリー化がされている施設はどれくらいあり、どの程度達成されているのでしょうか。耐震化については区立の小中学校において完全にしていただき、他の区立施設においても順次進められていると聞いております。併せてバリアフリー化についても、財政状況と相談してということになるとは思いますが、可能な限り押し進めていただきたいと思います。特に南大塚地域文化創造館と南大塚ホールにおけるバリアフリー化については1昨年に改修及びバリアフリー化の計画が施設利用者にも伝えられ、利用者の方々も心待ちにしておられましたが、経済状況の悪化に伴う税収不足により、その計画が延期されたという経緯があります。その後どのようになっているのか、また将来の見通しについてもお答えください。地域住民が待ちわびていることでありますので、東京都との折衝があるかとは思いますが、一日も早い改修及びバリアフリー化の完成を願っております。
次に、最近はセーフコミュニティの認証取得という言葉が先行し、それが目的化されているような感じを受けます。しかし私は認証取得による安心・安全な街豊島区というメッセージを発信することも大切だとは思いますが、その取り組みによって今現在ある様々な事故や健康被害あるいは自殺等の数字がどれくらい減少したかということが最も大切なことだと考えます。どの年の数字を基準にするかということから始まって、どれくらいの期間で検証するか、そして実質何割程度の削減を目指すか。また、その検証結果を受けて施策にどのように反映して更に数字の減少を図るかということが重要であります。そして、そのためには区民の今までの生活意識を根本的に大きく変える運動であると思われ、生半可な活動ではその目標実現は非常に困難なことではないかと老婆心ながら心配しております。
例えば、交通事故で言うと、いろいろと原因が考えられますが、結局のところ、急いでいてうっかり確認を怠ってしまった、不注意による事故というのが原因の多くを占めていると思われますが、それはつまるところ、その人の交通安全意識を高めるということであり、それは今までもずっといろいろな場面で啓発してきたことであります。であるにもかかわらず、これだけ交通事故が多いということは広報や啓発活動のあり方を根本的に見つめ直さなければならないということだと思います。自分の意識のことでさえそうであるのに、思いやりの心、譲ってあげる心など他人のことを思いはかる心を啓発するということはなおさら困難を伴います。ですから、認証取得を受けることになったとしても、それはスタートであって、そこからが本当の大変な戦いになるのではないかと考えますが、区の見解をお聞かせください。また具体的にいつの数値をどれくらいの期間でどの程度削減しようとお考えなのかも示してください。それについては世界26カ国、200か所を超えるセーフコミュニティ取得都市の動向も根拠になるかと思いますが、その都市の傾向も教えていただきたいと思います。
これは私たちの意識の大改革であり、言うなればルネッサンス的、もっというなら革命的な意識啓発が必要になると考えます。それくらいしないと成果が伴わない可能性がありますので、行政もある程度主導的な役割をはたしながらも、民間の方々に先頭を切ってもらう視点が必要であると思います。そういう意味では北池袋地区をセーフコミュニティ・モデル地区と指定し、その活動に広がりを持たせたいというのが区の意識するところではないかと考えます。区民の安心安全のために自分たちが変わらなければならないという意識啓発に大いに努めていただきたいと思います。
更に、セーフコミュニティ認証の6つの指標の中に、「国内及び国際的なセーフコミュニティネットワークへ継続的に参加する」とあります。これは今後開催されるあらゆるセーフコミュニティ認証取得都市との連携を意味するものであると思いますが、国際大会などでの参加が義務付けられていくものであると推察されます。また、セーフコミュニティ認証取得を目指す地方自治体がどんどん増えてきている状況の中で、その連携を深めていくということは豊島区においても交流都市、姉妹都市、あるいは防災協定都市などいろいろな連携する地方自治体がある中で、どのような役割を果たすものになっていくのでしょうか。単純に考えますと、交流する地方自治体の数が多くなることで財政的に負担になりはしないかと心配しておりますが、本区はその辺をどのように認識しておられるのかご答弁下さい。また多くの地方自治体と連携をとる意義について豊島区はどのように考えているのかも併せてご答弁ください。
また、一方で今回のセーフコミュニティ認証取得の取り組みで非常に画期的な展開が見られました。それが正に、指標1に見られる、分野を超えた協働を推進する組織の設置です。平成22年2月22日という非常に覚えやすい日に、警察署・消防署・町会連合会を始め、区民の安全を支える80以上の団体が集まってセーフコミュニティ取り組み宣言が行われました。一般的に行政というのは縦割り組織と言われておりますが、その弊害による問題点は今まで多く指摘されてきたことであります。しかしこの取り組みはまさにその弊害を乗り越え、分野横断的に区民の安全安心のために大同団結するということであり、画期的な組織体が出来上がったと感銘を受けております。ぜひともこの組織を生かして、安心安全のために区民の小さな、あるいは生の声が生かされる協議会になってもらえればと思っております。組織を作ることが目的化されてはいけません。設立した趣旨に合致した形で組織を運営していくことがより重要です。
そして画期的な実績を残すためにも、今までのようなお役所言葉ではなく、もっと親身になって安心・安全のためであるならば、その原因を除去する努力を行政側もしてもらわなければなりません。私が一番恐れているのは、セーフコミュニティ認証取得には成功したけれども、様々な数値・データの改善が見られなかったらどうするのかということです。認証取得がまず優先されることですので、今はそのことに全力投球をしているかとは思いますが、その後のことについても、しっかりとしたプランを立て、実のある運動になることを期待します。
そう遠くない過去に池袋では、心ないテレビ番組によっていろいろな悪いイメージが先行していた時代がありました。また不法な客引き等の問題があり、危ない街というレッテルをはられたこともありました。それらを解決するために地域の方々が立ち上がり、環境浄化パトロール運動がスタートし、その地域の方々の熱意に押されて東京都も警察署もいろいろと協力してくれるようになりました。各地域で同じように街を思う気持ちが安心安全パトロール運動となり、その運動が今、行政を大きく巻き込む運動となっていることに大変感慨深いものがあります。もちろん高野区長の強いリーダーシップにより今回のことはスタートしたわけでありますが、日本でもまだ3都市しか認証されていない、東京都では初めてのチャレンジになります、このセーフコミュニティの認証取得とその後の大いなる成果を心から期待します。そしてその結果として、選ばれる地方自治体としてこの豊島区が更に注目され、なおかつ、住みよい街、住みたい街、そして住み続けたい街として評価されることを祈念いたしまして、私の一般質問を終了いたします。ご清聴誠にありがとうございました。