●2010年7月 第二回定例会 反対討論 その2 (ワードデータで読みたい方はこちらより右クリックでダウンロードしてください。)
刷新の会、古坊知生でございます。私はただ今上程されております、22陳情第15号「選択的夫婦別姓制度の法制化に反対する意見書の提出に関する陳情」の不採択に反対し、採択すべきとの立場から討論いたします。
まず、総務委員会で議論をするために用いた資料によると、内閣府が実施した世論調査の結果では、夫婦別姓を容認する人が非常に多くなっているかのごとき説明がありましたが、正確ではありません。実際には、結婚前の旧姓を通称として認めつつ、夫婦同姓を支持する人を合わせれば、約60%の人が夫婦同姓を支持しています。夫婦同姓を守るべきだとする人は夫婦別姓を容認する36.6%を大きく上回っているのが事実であるということを指摘させていただきます。
内閣府の世論調査に触れるついでに申し上げます。夫婦別姓は子どもにとって好ましくない影響があると思う人も66.0%という大多数です。陳情者の意見が一般世論を代表していることを示しています。
日本国における現在の夫婦同姓制度は男女平等な制度です。夫婦は合意して妻の姓を名乗ることが今でも自由にできます。仮に少数意見のために夫婦別姓を認めたら、その影響は全国民に及びます。誰が夫婦同姓で、誰が夫婦別姓かは、見分けがつかないからです。全ての人間の配偶者、親、子ども、孫、祖父母の苗字は、それぞれ違うかも知れない、と考えなければならない社会になります。仮に少数の人が今よりも便利だと感じたとしても、大多数の人は今よりも不便だと感じるようになるに違いありません。国家レベルだと、行政のプログラムをすべて別姓に対応させるために大量の税金と時間が消費され、個人レベルでも冠婚葬祭や地域活動など日常生活レベルでトラブルが多々発生することになるでしょう。例えば、お墓の問題があります。別姓を選択した夫婦から生まれた子供が又別姓を選択した時、どのような姓になっているか想像もつきませんし、亡くなった時に何家のお墓に入るのかという問題も非常に深刻なものです。「選択的」という言葉で自由性を与えるかのごとく表現されていますが、実際の家族においては、夫婦が別姓になれば、子どもとの間では選択的ではなく、強制的別姓になります。それが子どもにとって幸福と言えるのかどうなのかという視点が選択的夫婦別姓を唱える人たちからは全く欠けているということを申し上げておきます。また個人の自由性を尊重するあまり、家族、社会、国家など全体に与える影響についてほとんど考慮していないというのも夫婦別姓を主張する方々の大きな問題点です。そもそも家あるいは家系というものは、先祖代々受け継がれてきているものであり、それを個人の不都合があるからといって、簡単に変えることができるような性格のものではないと考えます。仕事上不都合が生じるようであれば、通称制度自体をより緩和するというような手段で十分だと思うのです。
次に諸外国との比較論について少し申し上げます。まず、それぞれの国は歴史と文化が異なりますので、外国との比較論はあまり意味がないと考えます。ただ、一つ言えることは、夫婦別姓を認めている国においても、家族を代表するファミリーネームを持つ国がほとんどだということです。韓国は夫婦別姓ですが、ファミリーネームはあります。夫がキムさん、妻がパクさんの場合、ファミリーネームはキムです。妻はキム家の嫁のパクであり、子どもは必ずキムを名乗ります。また、韓国では氏というものを貴重視するあまり、結婚しても別の家から来た女性には自分たちの氏を名乗らせない、それくらい男尊女卑の国であり、そういう観点から言うと日本の夫婦同姓制度のほうがはるかに先進的であるといえます。また、日本の夫婦別姓案にはファミリーネームがありません。ファミリーネームが無い国の例はスウェーデンです。
スウェーデンと言えば、福祉大国として全国民の幸福実感度が高いと思いがちですが、1973年の婚姻制度の大改革もあって、離婚率の増加、結婚制度によらない事実婚が過半数に迫る勢いであり、結婚外で生まれた子どもも半数を超えており、家族崩壊の悲劇が起こっています。これも陳情書の正しさを示す事実です。また古い話になりますが、1917年の旧ソ連時代に置いて、事実婚(姓選択の完全な自由化)が認められた時代がありましたが、そこで起こったことは、①堕胎と離婚が急増して、出生率の激減を招いた。②家族・親子関係が弱まった結果少年非行が急増した、ということです。結局この政策は1934年に撤回され、以前の家族制度回帰の政策がとられるようになったことは歴史上の事実です。もちろん夫婦別姓制度が全ての要因だとは言いませんが、家族の絆を弱め、事実婚を事実上認め、結果として家族がバラバラになる可能性を強く秘めている夫婦別姓制度を推進することによって、スウェーデンや旧ソ連のような社会を日本国が進むようなことには断固として私は反対です。
以上のような観点から本陳情書に賛成し採択を希望して私の討論を終了します。ご清聴ありがとうございました。