●2010年2月24日一般質問全文 (ワードデータで読みたい方はこちらより右クリックでダウンロードしてください。)
「公教育の更なる充実を目指して」
刷新の会 古坊知生でございます。私は「公教育の更なる充実を目指して」と題しまして、①教育格差について②家庭教育について③その他として、より充実した教育講座の開催について一般質問いたします。理事者の皆様の積極的な答弁を期待いたします。
教育格差、学力格差という言葉が登場して久しくなります。新たな教育基本法の第四条には「すべて国民は、等しく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならず、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されないこと。」と定められています。すなわち「教育の機会均等」の精神が示されているのです。教育格差という言葉からはそのことに反する現実が感じられます。
先日、親の年収が高いほど子どもの学力が高いという調査結果を知らせるニュースがありました。調査は全国学力テストの公立小6年生の結果について追加調査したもので、文部科学省の委託を受けた研究グループが行ったものであります。それによると、世帯の年収と子どもの成績とがかなりきれいに比例していることが分かったそうです。ひと昔前まではそうでもありませんでしたが、今では小学校高学年になるとかなりの割合で塾に通う子や家庭教師がいる子どもを見かけます。親の年収によって子供の成績が決まるということは、生まれた環境が自分の将来を決定してしまうというあきらめの心を子どもに与え、頑張れば何とかなるのだという向上心を喪失させてしまいます。豊島区は現在のこのような状況をどのように考えているのでしょうか。
この問題を解決するために、私は公教育の更なる充実が必要不可欠であると思っています。すなわち公立学校に通っても高い水準の教育を受けることができるというふうにカリキュラムを変える必要があると考えます。もちろんこれは文部科学省が全面的に行わなければならないことであります。教育基本法が改正され、ゆとり教育の反省に鑑み、学習指導要領も改訂され、確かな学力を確立するために必要な時間の確保が実施されるようになってきています。私は以前のように土曜日も授業を行うことが子どもの学力向上という意味でも、また青少年の健全育成という観点からもよいのではないかという立場なので、この新しいカリキュラムもまだまだ不完全だとは思いますが、学力向上を目指すという方針転換がされたことは歓迎したいと思います。しかし、もちろんカリキュラムを変えるだけでは学力の向上は確保されません。教師力の向上ということも大きな課題の一つであると考えます。先般、今後の教育を考える意味でも大きな話題に上った事柄があります。それは電子黒板であります。
私自身は正直、電子黒板については不要不急のものとして今現在もそんなに必要性を感じてはおりません。しかし、教育の可能性を広げる存在として注目を集め、豊島区でも予算の無い中、全小中学校に電子黒板を設置してくれたことには敬意を表しております。問題はそれを使いこなせる教師がどれだけいるのかということです。素人が考えても電子黒板を使う授業を展開しようとしたら、よほどの準備が必要になることでしょう。昨今、本来の教師としての仕事以外のたくさんの雑務に追われ、忙しいと言っておられる先生方が電子黒板を使った授業に意欲的に取り組めるかと言ったら難しいのではないかと心配しております。電子黒板の使用の実態について区はどのように把握していますか。私が地元の学校の授業参観週間の時にお伺いした時もそうですが、あまり使用されていないという印象です。せっかく多くの税金を投入した電子黒板が宝のもちぐされにならないようにし、生徒たちの関心を高める面白い授業の為に、効果的に役立てていただきたいと思いますが、今後の利用についてどのように考えておられるのでしょうか。
しかし一方で、教師力の向上は何も電子黒板の使用で飛躍的に向上するものではありません。黒板に白墨を使ったオーソドックスな授業スタイルであっても、いかに先生が児童や生徒の授業意欲を高められる工夫をするか、また児童や生徒の気持ちをつかみ、信頼を得るかということが主たる取り組みになっていなければならないと考えます。先生同志の情報交換あるいは退職教師の現役時代に培ったノウハウの活用など、豊島区において更なる教師力向上に向けてどのような対策をとっておられるのかお聞かせください。
そして時には先生と生徒が努力した結果というものを実証し、分析をする必要があると思います。それが学力テストです。小学校6年生と中学校3年生において毎年行われる文部科学省の学力テストは個人の実力はもちろん学校の平均値、そして科目別の課題を知る上で非常に有益なものであると認識しております。しかし政権交代がなされて、平成22年度から、この学力テストの方式を今までの全員参加型の悉皆方式から一部の生徒参加型の抽出方式に変更して予算の削減を図るという方針が打ち出されました。今後そのようになった時に、豊島区としては抽出された学校とそうでない学校との間に生じる不平等をどのように考えているのでしょうか。抽出されなかった学校においては、先に申し上げた理由から学力テストを全員が受けることができるように豊島区が率先的に支援をしてもらいたいものです。先日の高野区長の所信表明にもそのことが述べられていましたが、改めて区の考えをお聞かせください。今回出された政府のこの方針転換に私は非常に違和感を覚えます、全ての子どもに等しく教育の機会を与えるという原則を無視していると思うからです。豊島区においてはそのようなことのない行政であってほしいと願っております。
いろいろと申し上げましたが、やはり最後は先生の生徒に対する情熱、愛情というものが一番重要なのではないでしょうか。一昨年の決算特別委員会でも質問をしたことがありますが、区内の小中学校において家庭訪問をしていない学校が結構あるとのことでした。私はそういう学校が一校でもあることにとても残念に思いました。昔と違って保護者の方々が家庭訪問を嫌がるということがあるかもしれません。中には個人のプライベートを侵してはならないと考える人もいるかもしれません。しかし教育とは子どもたちの心の中に入っていかなければ成立しないものではないでしょうか。教育の現場においても子どもたちの目線ということがよく言われたりしますが、そんなに子どもたちや親の都合を気にしていたら教育は成り立たないと危惧しております。もっと先生としてプライドや自信を持って堂々と、毅然とした態度を持つことが大切ではないかと私は考えます。そのような先生が熱い情熱を持って接すれば保護者も生徒も先生を理解し、信頼し、少なくとも今まで以上に努力しようとするはずであります。昨今、個人主義が蔓延し、コミュニティが崩壊しつつあります。自分たちさえよければという風潮が広がる中に学校と地域の関係が確実に希薄になってきています。核家族化が進み、子育ての基本さえも受け継がれない状況である今だからこそ、現場の先生方の頑張りが必要だと思うのです。そのような熱血教師を育てていただくことを切に希望します。先生が生徒から尊敬され、指導力が高まり、結果として子どもたちの学習意欲が高まり、公立学校であったとしても私立学校に負けず、多くの保護者がその熱血教師ゆえに公立学校を希望する。そんな豊島区の教育を目指してほしいと思います。
家庭教育についてですが、教育の基本は家庭で行われなければならないというのは誰しも異論のないことだと思います。我々保護者は学校をサポートし、先生を盛りたてていかなければなりません。そのためにも、家庭において社会の規範やルールなど、最低限のことができるようにしつけなければなりません。しかし今言ったように子どもの育て方や教育ということについて分からない保護者も確実にいるわけですから、家庭教育の在り方についても区として積極的に関わってもらいたいと思います。
先日、私の友人のある市議会議員から教育に関する情報の提供を受けました。それは人間としての基本である、挨拶や朝食を行わせることにより、学校や生徒そして家庭までも激変させた名校長「大畑誠也」先生のお話です。教育に携わる方ならご存知だと思いますが、現在九州ルーテル学院大学の客員教授である大畑先生は、熊本県の高校を転々とされながらそのすべての学校を立て直してこられた実績のある方です。私は平成二十年に佐賀市で行われた大畑先生の講演録の全文を読んでみましたが、先生の教育に対する情熱に圧倒されました。そして何よりも感銘を受けたのは、挨拶をするということと、朝食を必ず食べるという人間の最も基本な行動を徹底的に行わせることによって子ども達の成績を伸ばし、人間的にも成長させたという実体験でした。
熊本県のある高校に赴任した時に、三つのスローガンを掲げて実行させたそうですが、そのスローガンとは「大きな声で挨拶をする、大きな声で返事をする、大きな声で校歌を歌う、一日一回図書館に」というものでした。人間として評価されるためにはまず挨拶や返事がしっかりできないといけない。そして母校愛を高め、郷土愛に結びつけるために校歌を歌わせたそうです。また図書館へ頻繁に行かせるようにしたのはコミュニケーション能力を持ち、話せる人を養成するためでした。
そして、最近では食育という言葉が使われるようになりましたが、その言葉が流行する以前から、大畑先生は脳を働かせるためにはブドウ糖が必要であり、そのためには朝食を必ず摂らなければならないということで、半ば強制的に先生や親に協力してもらって生徒に朝食を摂らせる運動を行った結果、成績が良くなったという実体験を持ったそうです。朝食を食べてこない生徒には家からお米を一合持ってこさせ、学校で先生に作らせて食べさせるということを続けた結果、今まで怠けていた親も朝早く起きて朝食を作り、生徒がそれを食べてから学校に来るようになったというお話でした。まさしく、大畑校長先生の信念と熱意が先生方を動かし、変わってゆく生徒たちを通じて、親に正しい家庭の在り方を考えさせてくれたという事だと思います。
大畑先生はこうも言っておられます。「朝起きる、自分で起きる。自分の力で早く、それは意思を鍛えている。意志の強い人です。早起きは自立の第一歩です。」そしてまた、「情報公開の時代である21世紀に本物になるために求められる能力は、悪戦苦闘能力、そのためには、挨拶、体力、感性、集中、思考が大切である。」と。
私は講演録を読んだだけですが、実体験に基づいた大畑先生の理論に大変共感を覚えましたし、説得力のある内容に大変感銘を受けました。ぜひともこのような素晴らしい方を講師としてお招きし、教育関係者はもとより、PTAの方々にもお話を聞く機会を持ってもらいたいと思います。またこの方以外にも、現場の問題を克服してこられた教育に関して造詣の深い方をお呼びして、様々な観点から学校教育について、あるいは家庭教育について親子で考える機会を持つことは非常に有益なことと考えます。今までもいろいろな方を呼んで実施されているかとは思いますが、よりグレードアップした形での教育講座の開催を強く希望したいと思います。
ニュースを見れば、人と人が殴りあい、時には親子までも殺し合うということが実際に行われている、不道徳なそして秩序が崩壊してしまっているこの社会の中で、どのように人間関係を築くべきかということに現代人は自信を喪失しているのだと私は思います。親と子ども、先生と生徒、子どもと地域、このコミュニケーションがしっかり築かれた時、人々は自信を回復し、子どもたちは豊かな愛情によってたくましく成長することでしょう。豊島区立の学校中に、心身ともに健康な子どもたちの心からの笑い声が響くように、教育行政関係者の皆さまの更なる奮闘をご期待申し上げて私の一般質問を終了いたします。ご清聴まことにありがとうございました。