平成21年度 豊島区予算案意見開陳

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平成21年度 豊島区予算案 意見開陳

H21年3月24日

刷新の会 古坊知生

 刷新の会 古坊知生でございます。私は本予算特別委員会に付託されました7つの議案、平成21年度一般会計予算及び5特別会計予算、そして平成21年度豊島区介護保険事業会計補正予算第1号に賛成の立場から意見を述べさせていただきます。
歳入については、課税人口の増加などにより特別区税のわずかな増収が見込まれる半面、アメリカ発の世界同時不況の影響をまともに受ける中、特別区民税や特別区交付金など、予想される数十億円にも及ぶ税収減を埋めるために、4年ぶりに旧中央図書館跡地売却という財源対策を講じ、また大規模施設建設・改修の先送りや国保会計繰越金の活用、そして改修経費や経常経費の精査により歳出カットを断行し、しかも区民へのサービスは低下させない、将来の備えとして財政調整基金は取り崩さないという方針の下、予算編成部局のたいへんなご労苦を感じさせる予算案であります。特別区債発行額は17億1千4百万円で対前年度比243%増、起債依存度は前年度より1.4ポイント上昇して1.9ポイントとなっておりますが、公共施設の大規模改修経費などの増に対応したものであります。以上の観点から21年度の予算案はまさに「身の丈に合った財政」と言えるものであると評価するところであります。今後の景気動向次第では、積極財政の方向へと舵を切る場面もあるかもしれませんが、引き続き人件費の削減や事業の見直し等で行財政改革の姿勢を貫き、可能な限り「入るを図って出を制す」という原則を堅持してもらいたいと思います。
以下少し、予算の分野別に所感と要望を述べさせていただきます。
 昨年の決算特別委員会においても同様なことを言わせていただきましたが、行政の基本はやはり、福祉と教育であります。福祉については時代とともにいろいろな要望が出てきて、その仕事は複雑多岐にわたっております。社会的弱者に対する行政の役割が年々増大している一方、今後ますます伸びるであろう社会保障費について国民の負担をどうするかという議論が国会であまりされていない中で、地方自治体においてもこの福祉費の伸びをどのようにするのかという問題は喫緊の課題であると考えます。豊島区においては21年度この福祉費に対して予算の三分の一以上である34.3%を計上しておりますが、本当に支援が必要な方には適切に、しかしそうでない方に対しては毅然たる態度をもち、税の不公平感というものが生じないようしっかりと対応していただくことを要望します。
教育費ですが、21年度の予算は20年度から比べると西池袋中学校の建て替え経費等により12.6%増えています。今後学校改築計画により、巨額な経費が必要となりますが、計画をさらにより具体的なものに進めていただき、より良い教育環境の整備をしてくださるよう期待します。教育は未来への投資です。どんなに立派な街をつくっても、そこに住む人々の人間性が乏しいのでは意味がありません。教育の失敗は学校の風紀を乱すだけでなく、街の治安悪化にもつながります。教育をより良いものにすれば、今の子どもたちが大人になるころ、昨今問題になっている家庭の教育力、いわゆる「親力」も高まっていることでしょう。倫理道徳観に満ち、公益心に溢れる子供たちを社会に排出していかなければ、個人主義が蔓延し、地域のコミュニティも崩壊してしまいます。さらに、私は以前、「少子化対策」というテーマで一般質問させていただきましたが、子どもを育てる環境が整っている自治体だと子育て世代から選んでもらえるような、魅力ある自治体となるためにも教育分野にもっと予算をつぎ込んでいかなければならないと信じます。今後の更なる検討事項として要望させていただきます。
都市整備費と清掃環境費および土木費ですが、街づくりと環境という今までは相反するものを矛盾なくどちらも発展させなければならない21世紀いう新しい時代にあって、今後訪れる時代を見据えながら政策を準備することが必要です。アメリカのオバマ大統領が進めるグリーンニューディールの影響を受け、日本版グリーンニューディールが検討されています。太陽光発電や低公害車の普及など、CO2排出削減に寄与するものに対しては今後も普及しやすいように、その補助金の割合を更に見直す機会もあるかと思います。地球温暖化の問題が深刻化している今日、解決のために思い切った予算の配分をしなければ、将来を担う子供たちの未来を守ってあげることができません。国や東京都の動向を見据えながらも、持続可能な地球であり続けるために、また豊島区が住みたい街として選ばれために、特に環境という分野においては大胆な政策誘導を希望します。
文化商工費ですが、豊島区の特徴ある政策を推進する部局として期待しております。新中央図書館やあうるすぽっとを中心とした文化の発信はもちろんのこと、その守備範囲は多岐にわたっております。中でも中小企業に対する融資事業は補助率もアップさせ、深刻な不況な中、区内の中小企業をバックアップする事業として評価するものでありますが、今後の景気動向と豊島区の財政状況を照らし合わせながら、更なる支援の検討も希望します。また地元の商店街の活性化につながる様々な補助事業やスポーツ振興のための施設整備計画も盛り込んだ内容となっているところも今後の進展が期待されるところです。先般、文化芸術創造都市部門における文化庁長官表彰という栄誉に浴した本区独自の文化政策として様々ありますが、トキワ荘と並木ハウスという文化資源に光を当てたプランや、福祉と文化の融合などにおいても今後の展開を期待しております。
議会費ですが、区民と議会の距離を縮めるため、あるいは情報公開という観点からもインターネットによる議会中継が重要な手段として認識されつつあります。より多くの方々に視聴してもらうためにもさらなる広報に努め、内容においてもよりオープンに、より早く視聴できるように更に改善を図っていただくことを要望します。
総務費ですが、選挙にかかる経費もさることながら、よりスピーディに、より正確に結果が分かる電子投票制度の導入を視野に入れた検討を開始してほしいということも改めて希望しておきます。
特別会計ですが、特に介護保険事業会計では、初めて介護報酬が3%引き上げられることにより、施設の運営や介護従事者の処遇などに一定の改善が期待されます。今回の法律改正の趣旨が適正に現場で反映されるように、区の管理・監督・指導を期待します。合わせて利用者が受けるサービスの利用料も変わることから、利用者に対してももれなく周知徹底を図っていただくことも要望しておきます。
私は、今日の日本は行くべき方向性を探してさすらう難破船のように感じております。明治維新のときは富国強兵や殖産興業、戦後は所得倍増計画や日本列島改造論など、国民が一致団結して目指すスローガンがありました。経済が高度に発達し、世界の一、二を争う経済大国という地位を得てからは、次に日本はどうあるべきなのか、どこへ目指していけばよいのかということについて政治家からは明確なメッセージが聞き取れません。戦略なき国家、戦略なき政治は与野党を問わず滅びるのみです。一地方自治体である豊島区においても同様なことが言えると思います。
遠い未来を見つめて戦略をもち、今からその布石を打つことは大変重要でありますが、この経済状況の中でそれを実行することは、時には多くの反対を受けることにもつながります。しかし、豊島区が生き残るために、あるいは多くの方々から住みたい街として選ばれるためにも、豊島区としての行くべき方向性、目標を高らかに掲げるという意味で、「未来戦略推進プラン」を毎年発表して、将来のビジョンを示している豊島区の姿勢に一定の評価をするものであります。
 しかし一方で、生活保護費の給付や就学援助の議論の中で明らかになったように、本当に困った方々には手を差しのべなければなりませんが、そうでない方には毅然とした態度を示さなければなりません。教育においても同様なことが言えます。個人の自由にあまりにも重きをおきすぎて大切なものを失っている気がしてなりません。授業時間の確保のため、あるいは保護者の中で嫌がる方がいるからという理由で、先生と子どもまたはその家庭を深く理解するための家庭訪問をしなくなったり、給食費を滞納させてしまう問題など、これ以上少数意見に重きを置きすぎて、大多数の方々に不利益を生じさせてしまうことのないように、自信を持って堂々と、区政を運営していただくように要望いたします。しかし、もし暴走したら私たち議会がチェックするということも忘れないでいただきたいと思います。
 最後に今回の予算特別委員会において私の資料請求に対して、迅速に対応していただき、また私のつたない質問に的確にお答えいただいた区長はじめ、理事者の皆様に心から感謝申し上げます。そして本予算委員会における正副委員長の公正な運営についても、衷心より厚く御礼を申し上げます。以上で私の意見開陳を終了させていただきます。ご静聴まことにありがとうございました。