●2007年12月3日一般質問全文 (ワードデータで読みたい方はこちらより右クリックでダウンロードしてください。)

「世代間のバランスが取れ、活気に満ちあふれる豊島区を目指して」

刷新の会 古坊 知生 

 刷新の会 古坊知生でございます。私は「世代間のバランスが取れ、活気に満ちあふれる豊島区を目指して」と題しまして、①少子化対策について、②公教育の再生についてというテーマで一般質問を行います。区長を始め理事者の皆様の前向きな答弁を期待します。
さて、2007年から我が国でも人口の減少化が始まり、1億3千万人弱と言われた日本の人口も100年後には半分になってしまうという衝撃的な試算を最近耳にするようになりました。高齢化社会を迎え100歳を超える方が全国で3万名を数える時代となり、ご高齢の方がお元気で社会活動を営んでいるということは何にもまして素晴らしいことだと思いますが、一方で少子化が進み、生産年齢人口が減少することによって、高齢者の方々を支える社会保障費の確保が困難となり、将来の希望あるいは展望が見えない状況が生まれています。昨今、プライマリーバランスを重視するあまり、社会保障費を毎年減少することによって、特に産婦人科や小児科の医師不足や看護士不足の常態化、介護士の高い離職率問題、そして後期高齢者医療制度など大きな問題が顕在化してきました。将来に負担を残さないために支出を見直そうとすることは理解します。しかし机上の空論だけで予算を削減して、血の通わない制度に変えても何の解決にもなりません。むしろもっと根本的な解決方法を見出すべきと考えます。
私はこの国の未来のために今こそ少子化対策に本格的に取り組むべきと考えます。本来は国がもっと推し進めるべきです。確かに成果が表れるのには10年・20年ぐらいの期間が必要になるでしょう。しかし若者の人口が増加すれば、社会保障の問題は解決へと着実に進むものであると確信します。科学あるいは医療が進歩した今日においては高齢化社会が進むということは当然のことです。少子化という社会現象も時代が生んだものという側面はありますが、政策的に生まれたものであるとの指摘もあります。高度経済成長期において我が国は、消費を増やすことを優先するあまり、核家族化を進めた時代がありました。世帯が2倍になれば消費も倍に増えるという考えでした。昔は親・子・孫と三世代にわたって同居することにより、家族が助け合い、子どもを産んでも家族の支えの中で母子ともに健康に育ちました。核家族化が進むことにより、母親の妊娠・出産・育児の負担が大きくなり、精神的にも経済的にも重荷を背負うことへの回避から、我が国の合計特殊出生率は年々減少し、昨年でまだ確定値ではありませんが、1.34と欧米先進国の中でも最低のレベルにあります。人口が減少する国には将来の発展はありません。水没するのみです。この少子化問題を克服した時こそ、経済が活性化し、税収が増え、増大の一途をたどる社会保障費の問題も解決されるはずであり、それによって先に述べた様々な社会問題も解決されると確信するものであります。したがってこの少子化対策を国に積極的に働きかけると同時に、それぞれの自治体においても本格的な取組みを開始しなければならないと考えます。そこで質問します。
豊島区のいわゆる合計特殊出生率はどれくらいで、全国や東京都と比較してどのようになっているのでしょうか。そしてその事実に対して区はどのような問題意識を持っているのかお答えください。
海外における少子化対策でよく言われるのがフランスやスウェーデンの事例ですが、国民性も税制も違う国と比較するのは難しい作業ですので、ここでは参考になる考え方を紹介しておくだけにしますが、スウェーデンでは、母乳で育てるという考え方が一般的で、 「1歳児神話」すなわち、1歳までは母親が育てるべきだと考えている人が多く、そのため充実した育児休業制度がとられているということでした。具体的には出産後1年間は育児休業を取って子育てに専念し、職場に復帰した後、子どもを保育所に預けながら、働く時間を短く設定して、数年後に通常の労働時間に戻るという母親が多いのだそうです。子育てを家庭も社会も、真に支援する体制になっていることを感じます。
フランスでは子どもが一人の時にはその対象にはなりませんが、2人以上になると子ども手当が支給されます。11歳になるとその額が加算され20歳まで支給が続けられます。3人目となるとその家庭に対する優遇措置は公共の国鉄、地下鉄運賃の割引、美術館やホテルなど文化・レジャー施設の料金割引など生活の隅々に及ぶようになります。また公立であれば高校までの学費も無料となっています。そしてスウェーデンと同様、充実した育児休業制度が施されています。
先進国でも比較的出生率の高いイギリスやアメリカを例にとってみると、その原因は政策というよりも、15歳から19歳までの合計特殊出生率が高いからだという統計が出ています。これは逆に家庭を築くべき年齢でないにもかかわらず、子供を生んでいるということで社会問題にもなっているようです。
こういうことを踏まえた上で、地方自治体として何ができるかということを豊島区は早急に検討を開始すべきと思います。これは国の問題であると一言で済ます話ではありません。人口の減少と少子高齢化の波は確実にわが豊島区にも差し迫っているのです。老若男女が互いに尊敬しあい、助け合う、そして世代間のバランスのとれた豊島区を作るために、豊島区も行動を始めるべきです。そのような緊急的な課題として認識しているのかどうかお聞かせください。
福井県の福井市では、この問題の深刻さを認識し、平成12年に少子化対策センターを設置し、全庁的に広い視野で検討すべく少子化対策推進本部を立ち上げ、平成13年には全国初の少子化対応推進全国フォーラムを開催し、この問題で地方自治体としては先頭を切って走っています。「福井市少子化対策総合計画」を見てみますと、市民に対するアンケート調査の結果から少子化の原因として、①未婚率の上昇と晩婚化の進行、②子育てや教育にかかわる経済的負担感、③仕事と子育ての両立支援の不備等が挙げられています。これは全国どこへ行っても同じような結果が得られるのではないかと思います。また少子化の影響としては、労働力人口の減少をもたらし、経済成長を抑制し、社会保障負担の増加から家計を圧迫し、子ども同士の交流の機会が減少することにより、親の過保護、過干渉を招きやすくなる可能性、ひいては子供の自主性や社会性が低下することにもつながり、地域の過疎化や近隣関係の希薄化が進み地域活動の実施が困難になり、行き着く先はコミュニティの崩壊であると警鐘を鳴らしています。
そのような問題を克服するために、具体的な事業がとられていますが、以下私が注目するところを申し上げます。第一に、結婚に対する意識の啓発という意味で、学校における結婚・家庭観のイメージアップ事業です。家庭科、道徳の時間などの学習活動を通じて家族の良さや大切さを理解させ、結婚や家庭に対するイメージアップを図るというものです。次に、結婚に向けた環境の整備という意味で、新婚世帯向け公営住宅確保の研究です。新婚世帯の優先入居など、新婚世帯が住居を確保するための施策についての研究を進めるものですが、面白い試みだと思います。第三として、育児休業への支援ですが、国や都、関係機関と連携を取りながら、周知徹底を図り、企業等に対して育児休業の制度化と取得に向けた啓発を進めるものです。これも大切な視点だと思います。次に出産・子育て後の社会復帰の支援として、妊娠・出産・育児を理由に退職して再就職を希望する女性について、関係機関の支援制度に関し積極的に情報提供するなどの対策も盛り込まれています。その他、子育てに関わる経済的負担の軽減を図るため、児童手当を充実する、二人以上の子どもを持つ家庭には保育料軽減措置を拡充する対策など、その施策は多岐にわたっています。まさに全庁挙げての取り組みとなっているのが特徴です。豊島区も福井市のこうした取組みを参考にし、少子化問題に対する検討会議を即刻始めるべきだと思いますが、前向きな答弁をお願いいたします。
女性の社会進出が進んできていますが、一方で女性しか子どもを産むことはできません。日本では「三つ子の魂百まで」ということわざがありますが、幼児期において父親というよりは母親から受ける影響のほうが圧倒的に大きいということを考えれば、母親が妊娠・出産・育児を行いやすい環境を整えるのが行政の使命と感じます。そして専業主婦が何か恰好悪いようなイメージが最近あるようですがとんでもない話で、幼児期の育て方、愛され方によってその子どもの人生そのものが決まってしまうくらいに言われる昨今、子どもを立派な社会人へと育てることが自分の家庭あるいは地域、大きく言えば国家のために大きく貢献するのだという意識を啓発することが大切ですし、児童における税額控除や三世代が同居する世代を優遇する税制を用いたり、様々な手当てを厚くしたりして、子育てが保護者の負担にならないようにすべきと考えます。夫婦共稼ぎをしなければ生活がやっていけない現代の状況の中で、0歳児、1歳児保育をしているご家庭が多く見受けられます。親としてはまだあどけない、小さな赤ちゃんを預けることは断腸の思いでしょう。しかし幼児期のときは母親とのスキンシップが一番必要な時であることを考えると、やはりそれでいいのかというのが誰もが感じる疑問です。昔とは比較にならないくらい事件が凶悪化、そして低年齢化している現代において、家庭における子育てあるいは教育が問題であると指摘する声をよく聞きます。そういう意味でも妊娠・出産・育児・社会復帰の各段階において豊島区が手厚く支援ができる日が早く来ることを心待ちにしています。
少子化対策を行うと同時に考えなければならないのが、教育だと思います。いくら対策を施し、合計特殊出生率を上げ人口を増やしたとしても教育が正しく施されなくては、意味がありません。すなわち、個人の自由ばかりを追求するのではなく、自分が努力して社会において一定の成功を収めるだけでなく、公益心を持ち社会に貢献できる人材に育てなければ、昨今起こっている社会問題が解決するはずもなく、逆に増加の一途をたどるでしょう。そういう意味で少子化対策と教育はセットで考えるべきだと思います。
教育を考える上で私が今優先的に解決しなければならない問題と考えているのは、「教育の機会均等」ということが成されていないという現実です。ゆとり教育の弊害もあり、学力の低下が著しい日本の子どもたちでありますが、家庭の経済的状況が許せば、将来の有名大学合格ということを考えて公立学校よりは私立学校を選ぶご家庭が増えてきております。私も自分の子どもの使っている教科書を見ましたが、昔と比べて記述されている内容があまりにも少なく、厚さも本当に薄いものになっていてかわいそうに感じました。砂漠の砂に水が染み込むくらい、記憶力あるいは吸収力の最も優れた小中学校の時代において、ゆとりではなく知識をどんどん吸収するというカリキュラムに変えていかなければなりません。文部科学省においてもゆとり教育の見直しを進める方針が出されました。今後学習指導要領も変わりカリキュラムの変更がなされていく中で、国の方向性を見定めることも必要ではありますが、教育について地方自治体においても、もっと自主性を持って創意工夫をすることが必要であると考えます。特に私立学校へ行った子供のほうがどんどん勉強の成績が伸び、結果として公立学校に通った子供たちより進学率が高いとか、あるいは有名大学の合格率が高いということであれば、先ほど述べたように教育の機会均等とは言い難く、公立学校に通う子供の保護者としては受験戦争のために学力不足を塾や家庭教師を付けて補充するように努めるし、またその経済的余力のない保護者の家庭では塾にも行けず、結果として成績が思わしくないという傾向にあると言われている今日、公立学校においても自分が努力すれば、私立学校の生徒に勝るとも劣らぬ学力を身につけられる体制を早急に作らなければなりません。それが本当の公教育の再生だと考えます。
私は先日、教育改革というテーマで品川区役所に視察に行ってお話を伺ってまいりました。担当者のお話を聞いて教育改革に対する意識の違いに圧倒された感がありました。品川区ではその潤沢な教育予算をフルに使って、まず小中一貫校の設立というものを進めました。小中学校の9年間を従来の6・3制から4・3・2制というものに変え、新しく学校を作らなくとも近隣の小学校と中学校を連携させて授業を行うようになっています。学校に対する地域を主とした外部評価制度を用いて教職員に適度の緊張感を持ってもらい、良い学校づくりを地域と一体となって取り組む体制が出来上がっているようです。いろいろと新しいことに取り組んでいるのですが、私が大変驚いたのが、自分たちで新しいカリキュラムを作り、また今の教科書が物足りないとして教科書をサポートする副教科書や学習指導要領に書き足しを加えた区独自の学習指導要領を作成して教員にわたしているとのことでした。品川区の前区長が福祉の後は教育を充実させると言って、渋谷区のほうから人材を確保し、教育長に据え、そこから教育改革がスタートしたということでしたが、その前区長も亡くなられ、いわば遺言として現区長にもその精神が受け継がれ、教育費に多くの予算が充当されるようになったということでした。だからこそこんなに思い切ったことができるのだと思います。区が違うし、財政状況も違いますから、品川区の通りにやれとは言いませんが、私は品川区のように地方自治体も主体性をもってカリキュラムや学習指導要領等を変更できる自治体があるわけですから、せめてわが豊島区においては公立学校へ行っても私立学校と比べて遜色がないと言われるように更なる意欲持って取り組んでいただきたいのです。品川区の担当者に「そんな事をして文部科学省は勝手にやるなと文句を言いませんでしたか」と質問しました。担当者の答えは、「最初はやれるものならやって見ろ、という感じでしたが、最近は実績を認めてくれたのか、なにかあるとすぐ品川区に協力を求めてきます。」というものでした。お金持ちの家庭の子どもの成績がよくて、経済的に余裕のない家庭の子どもの成績が悪い傾向にある現状の教育を変える取り組みは杉並区の「夜スペ」にも見られます。いろいろと賛否両論あるとは思いますが、教育の現場にまで格差という波が押し寄せているなかで、教育の機会均等という教育基本法にもある精神を具体化させるべく、豊島区も一歩前に踏み出していただきたいと思います。公教育の再生のカギは公立と私立の格差の是正にあると確信します。そのためにはやはり、教育費の充実が前提となりますが、豊島区独自の未来を見据えた、豊かな学力・豊かな人間性を目指した教育にしてほしいものだと思います。学校の授業をしっかり聞いて、しっかり自分で復習すれば志望する大学に合格することができた昔のような教育に早く戻ってほしいというのが、保護者の大いなる願いであると感じます。学校で一生懸命学び、家に帰ってからも塾で学ばなければならない子どもたち。公立学校のカリキュラムが以前のように戻れば塾に行く必要性もなければ、家庭教師をつける必要性もなくなります。保護者が捻出しなければならない教育費も節約されるでしょう。それも一つの少子化対策と考えます。将来的に義務教育を今の中学校までとするのか、あるいは高校までにするのかという議論がでてくることも考えられます。
いずれにいたしましても、今後地域をあるいは日本を引っ張っていく未来ある子どもをたくさん産み、そしてしっかりした学力が身についた社会人に育て上げなければこの地域もこの国にも発展はありません。このような観点からも是非とも公教育の再生についてご検討をお願い致しまして、私の一般質問を終了します。ご清聴誠にありがとうございました。