●2008年10月20日決算特別委員会にて意見開陳 (ワードデータで読みたい方はこちらより右クリックでダウンロードしてください。

意見開陳

刷新の会 古坊知生

 刷新の会 古坊知生でございます。私は今回初めて決算特別委員会の委員として付託を受け、審議に参加しました。最初に豊島区の19年度の決算書の資料をわたされた時には正直その分量の多さに肝を冷やしました。と同時に区としてこんなに多種多様な区民の要望にこたえているのかと今更ながら驚嘆したところです。一期生の新人議員として、素人感覚ではありますが、区民に一番近い立場の者として、今回の委員会における所感や意見を述べ、賛否に対する表明をしたいと思います。
 まず、区長はよく、「就任当初はこんなに豊島区の財政が深刻な状況だとは知らなかった。」とおっしゃいます。バブル崩壊後日本全体がそうであったように、本区におきましても、収支のバランスが崩壊してしまいました。その後の区財政の困難な道のりは、ここで改めて述べるまでもありません。当時の状況は誰もが予想をしなかったことではありますが、区長と議会は区民から選ばれた二元代表性というシステムをとっている以上、区長が出してきた予算案に対して、収支のバランスがとれていないならば、区民に将来大きな負担を残すという理由で、反対し逆に新しい予算案を提示するという選択肢もあるはずです。また反対をしてこなかったからこそ、いまだに600億円弱という多額の負債を背負わされているわけですから、当時の財政出動型の予算案に賛成をしてきた以前の議員に対して、私は無責任極まりないと憤りを感じているところです。財政再建のために高野区政においてとられてきたここ10年来の努力は知れば知るほど筆舌に尽くし難いものがあるからです。今更とやかく言ってもしかたがありません。そのことを教訓として私たち議員はどのような態度で臨むべきかといつも考えております。
 区民の代表である以上、将来に対して負担を残すような収支決算あるいは、予算案には基本的には賛成をしないという姿勢は今後貫いて参りたいと思います。そういう観点で今回の決算書をみますと、単年度収支では四年連続黒字となり、財政健全化判断比率においても健全段階の位置づけになっているところから、決算収支が着実に健全化していると言えることは何にもまして、評価できるところと考えます。「入るを量って出ずるを制す」という言葉がよく使われます。それを区にもあてはめてみますと正に「身の丈に合った財政」と言えるのではないでしょうか。しかし一方で、最近のアメリカ発金融危機という状況で大企業だけでなく、もともと苦しい経営状況にあった中小企業までもがその影響下に飲み込まれようとしている中、来年度以降かなり税収減という可能性があると見込まれますので、その辺を見据えた財政運営を要望しておきます。
 款別に少し申し上げますが、私は区政の基本は「福祉」であり、「教育」であると思っています。「福祉」の面でいいますと、国は2011年までにプライマリーバランスを黒字化するため、一時期は聖域とも言われた社会保障費の抑制を図るべく、さまざまに制度改正をしており、その弊害が社会問題となって顕在化しています。おりしも、グローバルスタンダードの美名のもとに市場競争原理を過度に推し進めたため、勝ち組・負け組という言葉とともに「格差」という現象がいたるところに拡大してしまいました。低所得者層が増え、税金や保険料を払わなければならないと知りつつも、現実には払えない世帯が増加する中に、保険料や税金の滞納も増え、制度の維持が困難になりかねない状況です。もちろん国民の義務である納税や、保険料の徴収については、粛々と進めなければならないと思いますが、一方で本当に困っている方々には親身になって対応することもお願いするところでございます。
 教育についてですが、まさに「国づくりは人づくり」という言葉のように、未来の地域、あるいは国を背負って立つ子供たちを立派に成長させることこそ、一番の行政の仕事であると思います。アメリカ合衆国の建国の時、当時の人々が、生きていくために農業を興すことよりも、その精神的な支柱である教会とそして未来の国の発展のために子供たちの学校を作ることを優先したという歴史的逸話はあまりにも有名ですが、やはり教育こそ行政の中心でなければならないと私は考えます。
時代の流れの中で、「大きな政府」と「小さな政府」という言葉がよく使われます。大きな政府は、過度な福祉政策によって国民の働く意欲を低下させ、怠惰な精神が社会を覆うという危険性があります。また逆に小さな政府下においては、拝金主義や個人主義が蔓延し、貧富の格差が生じ、犯罪の増加という現象が進む危険性が指摘されています。現代の日本では後者の小さな政府というものを標榜していると思われますが、自由には責任が伴っており、ルールを守るという道徳・倫理が社会の基盤として存在しなければ、悪の循環がますます増幅されていくことでしょう。だからこそ、イギリスのサッチャー元首相が「良き市民になり、モラルを高めていこう」と叫んだように、自由と平等、あるいは権利と義務を正しく教える教育が行われなければ昨今の多くの社会問題は解決しないというのが私の持論です。だからこそ教育の必要性を訴えたいのです。
 豊島区の教育においては一部で他区に先駆けて行っている事業もあるようです。少ない予算の中で創意・工夫をしており、評価はしますが、一方で「教育豊島」というにはまだまだ至っていないように見受けられます。他の自治体に行っていろいろ聞いてみましても、文部科学省と相談しながら、小中一貫校教育というものを具体的に実践したり、自分たちで新しい教科を作り上げたり、カリキュラムを独自につくったりと、既定の枠にとらわれず、前向きに挑戦している自治体もみられます。それにはもちろん財源の裏付けがあるのですが、総予算の17%も教育費にあてがっている品川区の例は、新しい発想をもって全国の地方自治体においてそれこそ特色ある教育を目指して競争が開始されている今、一考に値すると思います。豊島区に生まれてよかった、そして豊島区の学校に通ってよかったと思ってもらえる教育を目指してほしいものです。私立学校であろうが、公立学校であろうが、同じ学力が身に付くということが保証されなければなりません。教育の機会均等という観点からも、公立学校では勉強が遅れてしまうから、塾に通わせなければいけないという昨今の現実の問題を解決するためにカリキュラムの見直し、教科ごとの学習指導要領の区独自の見直しなど、様々な観点から教育費のさらなる充実を希望しておきます。
 新庁舎やLRTの建設など、将来における豊島区のキーポイントとなる政策が現実味を帯びてきました。これからの時代、自治体間における競争がますます激化することは容易に想像できます。豊島区としてもその競争から生き残っていくために豊島区はこんな区であるというメッセージ性のあるものを打ち出していかなければなりません。そういう意味で「人と環境にやさしい豊島区」というテーマは時代をとらえたものであると認識しております。
 CO2の削減を義務付けられている昨今、緑地化を進めることはもちろんのこと、太陽光発電等、新時代のエネルギーに対応する戦略を区として一定のビジョン打ち出していることを評価しますが、もっと明確にして区民全体が将来の地域、あるいは地球の環境を守るため、脱炭素社会を目指していけるように更にリードしてほしいものです。都市の基盤整備と環境に配慮した街づくりという一見矛盾するかのような政策を融合させていくという意味で、区長の提案するLRTを中心とする交通網整備は方向としては正しいのかなと思っておりますが、ぜひとも多くの区民のご理解を得れるように説明責任をさらに果たしてもらいたいと思います。そして、大都市の中で人にも環境にも配慮している、まさにユニバーサルサービスの目線、そしてエコという観点からの街づくりにまい進してもらいたと思います。さまざまな公共施設におけるバリアフリー化はもちろんのこと、住んでよかった思える豊島区の実現のために更に全力を傾注していただくことも併せてこの際お願いさせていただきます。
 あるところで支出を多くするのなら、あるところでは支出を削っていかなければ「出ずるを制す」ということになりません。今回の決算特別委員会でも申し上げましたが、区議会の費用弁償費、議員定数の削減、選挙管理委員会の委員報酬など、まだまだいろいろな報酬や細かいところにおいて見直す点が多々あると思われます。そのために議員も自らの身を削る勇気をもたなければなりません。税金というのは自分のお金ではないという意識よりは、人さまのお金を預かっているという認識を議会も役所も共有するならば、一円というお金も大切に考えるはずです。ぜひともそのような認識をさらに徹底してこれからの区政に取り組んでほしいと考えます。
 いろいろな観点から私の中での理想の区政について語ってまいりましたが、平成19年度一般会計歳入・歳出決算及び4特別会計において、いろいろと課題は見え隠れしますが、方向性においては共有するところも多いのではないかという思いの中で、賛成を表明させていただきます。この委員会に臨むにあたりまして、区長や副区長、教育長はじめ理事者の皆様におかれましては私の質問に真摯に答弁していただきありがとうございました。また理事者や職員の皆様にもいろいろと資料請求をさせていただきましたが、迅速かつ的確な資料を頂きましたことに心より感謝申し上げます。
 以上総論を語らせていただきました。今後も高野区長を先頭に豊島区が時代を切り開く先駆的な区として評価を得ることができるように、果敢に挑戦して頂きますよう。そのために区職員2000名体制のため人件費抑制など多くの努力をされていることはたいへん評価しますが、さらに無駄遣いがあれば抑制し、身の丈に合った健全財政を継続することができるよう、努力をしていただきますことを重ねて要望させていただきます。そして二元代表性の中で区民から選出された私たち議会もそれをしっかりとチェックさせていただくことを表明させていただきまして私の意見開陳とさせていただきます。ご静聴まことにありがとうございました。